
歪の華とは百五十年ほど前、『空想皇国』に存在していた部隊名で研究者であり、局長を担うアオイ=イトスギが率いるキョンシーとなった15人の女性によって構成された少数精鋭部隊である。
戦時中の空想皇国にて『特殊強化戦闘兵製造計画』の一つとして考案された『特殊強化戦闘部隊』で、そのコンセプトは疲弊をしない兵士を作り上げるというものであった。
『特殊強化戦闘兵製造計画』の初期段階では『ゴーレム兵』や『術式による肉体を直接強化』する案が検討されていた。
ゴーレム兵は魔力を補給している限り疲弊という概念はない。しかし命令通りの動作しかできないゴーレムは知能面において優秀とはいえないため、兵士としての運用には問題があった。
また術式による兵士の肉体の強化は、施術後の暴走や検体の死亡などにより成果を上げることができず、『特殊強化戦闘兵製造計画』自体が頓挫している状態であった。
そんな状況の中で、アオイによる研究の成果として誕生したのがキョンシー化の技術であった。
この技術は人を素体として、体内にアオイの魔法である糸を埋め込み身体の強化と術式を与えるというものだ。
しかし、キョンシー化には脳組織のみが死んでいる状態の素体が必要であり、アオイの魔法との相性にも左右されるため、施術の成功率はあまり高くない技術であった。
それでもキョンシー化による身体強化の効果や魔力を生命力に変換する術式によって理論上は半永久的に行動を行えるという特性は、『特殊強化戦闘部隊』のコンセプトでもある疲弊しない兵士に近い目標を実現しており、頓挫寸前の計画の中で唯一の成功例となったこの技術は周囲から高い期待を寄せられる事になった。
また、問題となる素体の確保や施術の成功確率の低さを補うため、逆にキョンシー化に成功した個体の損失を減らす方針が取られ、他の部門からも歪の華への技術提供が行われた。
式を召喚するための術式構築能力や個人の魔法の特性や個性に合わせた専用の武器の提供である。
こうして、一個体を究極に高めるという形で計画が進み、少数精鋭が生かされる暗殺任務を中心に活動する事になった。
【歪の華】
所属人員は十五人、個体毎に番号が割り振られている。
全員が女性で構成され、花や植物関連の秘匿名が使われている。この名前はアオイが命名している。
主に三人一組で行動するようになっており、式も三人で召還する。
歪の華 メンバー
壱番 妃枯(ひがれ) 花:ヒガンバナ
弐番 輝氣(きき) 花:キキョウ
参番 閃火(せんか) 花:キンセンカ
肆番 翠漸(すいぜん) 花:スイセン
伍番 絢覚(あやさめ) 花:アヤメ
陸番 譚里(たんり) 花:ボタン
漆番 菊乃(きくの) 花:キク
捌番 漣華(れんか) 花:レン
玖番 亜百合(あゆり) 花:ユリ
拾番 那頭(なず) 花:ナズナ
拾壱番 菫絵(きんえ) 花:スミレ
拾弐番 乙霧(おとぎり) 花:オトギリソウ
拾参番 宮桜(くおう) 花:サクラ
拾肆番 蘭音(らんね) 花:ラン
拾伍番 萩夜(しゅうや) 花:ハギ