Lilityth   -past memory-


……静かになった廊下にクラハドが一人で立っていました。

ただ、正確には壁にもたれ掛かかりながら立っているという状態です。

クラハドはその場にいた敵を全て倒しましたが……彼も無事では済まなかったのです。彼の身体を壁と一緒に剣が貫き、壁に串刺しにされてしまったのです。

「は……はやくお嬢達を……追わないと……な」

クラハドは身体を貫いている剣に手をかけ――必死にそれを引き抜こうとします。

「くぅ――うぅぅ……」

しかし、身体に刺さった剣はぴくりとも動きません……。

「ははは――抜けねぇ……これじゃ……お嬢達を追えないじゃねぇか……くそっ」

……すでに焦点の合っていない目と少し悲しげな表情で呟きます。

「お嬢……無事でいてください……あなたは俺たちの……大切な……かぞ……く…………」

――それが彼の最後の言葉でした。

そして……体に刺さった剣を引き抜こうとしていた手が力なく垂れ下がりました。

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

私はベストルに連れられ、緊急時に逃げるために用意された隠し通路に向かって走り続けていました。

「あとちょっとですよ、頑張ってくださいお嬢様」

「うん!」

幼いとはいえ、私もその時が大変な状況なのだと理解できていました。

だから私は必死に走りました。

しかし――。

「お嬢様!」

突然ベストルの大きな手に前に行こうとする私の体は止められました。

「お嬢様――さがっていてください」

よく分からずに私はベストルの後ろに下がります。

そしてようやく気がつきました。

私たちの前に――またしても見知らぬ人が立っていたのです。……私はこの人も悪い人なんだろうと感覚的に理解しました。

「――俺が奴を押さえている隙に隠し通路に行ってください……場所は分かりますね?」

ベストルが私に小声で言いました。

「う……うん」

私は不安を必死に押さえ込みながらベストルに答えます。

「さすがお嬢様、理解が早くて助かります」

ベストルの手が私の頭から離れ――その手が腰の剣を握ります。

そしてベストルが敵に向かって走り出しました。