Lilityth   -past memory-


一瞬の沈黙。

「ゴーレム……いやオートマタか?」

聖英雄騎士団の兵士達は突然の事で反応が遅れ、オートマタと呼ばれたそれが先に動き出し、オートマタは迷いなく私の方に向かって突っ込んできます。

一歩遅れ、私を殺そうとしていたリーダーの男もすぐさまオートマタに立ち向かいます。

青年の剣士も剣を抜き、魔道士の女性も唱召を始めました。

しかし、オートマタは私との間に立ちはだかる三人の敵兵をものともせず、変わらない速度で向かってきます。

オートマタは腕を大きく振り、それが一番早く行動に出たリーダーの男を吹き飛ばしました。

「ぐはあああああっ!」

男は自分の剣で直撃を防いだものの、その衝撃でかなり遠くまで吹き飛ばされました。

「つ……強い」

青年の剣士と魔道士の女性はオートマタの能力に怯みます。

その隙を突くようにオートマタが残り二人の兵士をすり抜け、私の目の前まで来て止まりました。

オートマタが片手を伸ばし、私はそのオートマタの手に抱き上げられました――オートマタは私を抱き上げるのとほぼ同時に反対の手で父の折れた剣を握ります。そして、オートマタは私をしっかりと抱くと、敵兵の方に振り返ります。

「――くっ、逃がさないぞっ!」

オートマタに抜かれた焦りと恐怖を感じながらも青年の剣士がそう叫び、私達に向かってきます。それとほぼ同時にオートマタも再び動きます――今度は出口に向かって。

「止まりなさいっ!」

唱召を終えた魔道士が雷系の魔法を放ってきました。

しかし、オートマタも咄嗟に回避行動を取ります。

放たれた雷はオートマタの足元を掠めましたが、直撃はしませんでした。

「避けられた!」

「くそっ、待てえええっ!」

オートマタの攻撃で吹き飛ばされた男がふらつきながら立ち上がってそう叫び、青年の剣士と魔道士の女性も私達を追いかけてきます。

しかしオートマタの移動速度は早く、私達は彼らに追いつかれる事なく逃げ延びる事ができました。

外は雨がひとひと降り出していました。

そんな中、私はオートマタに抱かれながら夜の森を移動していました。

道は雨でぬかるみ、さらに木の根などが行く手の邪魔をしますが、雨音が私達の存在を隠し、匂いも消してくれています。

しかし、この雨は私の体力をどんどん奪っていきます。まだ幼い体に過度の肉体的疲労に加え、命の危機にさらされ、多くのものを失った事により、精神もボロボロになっていました。

私は死ぬのかな?

そんな事が頭を過ます、死ねばみんなの所に行けるかもしれないと――温かい家族が待っている場所に行けるなら……死んでもいい?

動かなくなっていく重い体――失った悲しみ。

――そして誰も居ない孤独。

今、この現実にはそんな辛い事しか残っていない。

死にたい、そう私は死にたいんだ……そう思いました。

――そんな時です。

異様な金属音と共にオートマタが転倒しました。

先ほどの戦いでオートマタの足を掠めた雷は、オートマタの膝にダメージを与え、それが今限界に達しために、オートマタ膝が二つに分かれてしまったのです。