Eltofeena -lost queen-
一日の約八割ほどが陽の当たらない――そんな土地に作られたその街は、昔から夜の街と呼ばれてきた。
この様な場所にわざわざ街が作られた経緯には、当時この場所が砦だった事が要因となっている。地形の関係上、他方からの侵入を拒み、防衛に向いた地形であり、当時この国の首都が滅んだ際に、重要拠点として活躍したこの場所に次の首都が置かれたのである。
これが現在の幻想帝國の首都ナイトメアが誕生した経緯である。
そして、その国を治めるのが、エルトフィーナ=リクライアス女王である。
この国の皇帝には、単純な強さが一番求められる――つまり彼女はこの国で最強の強さを誇っていた。
エルトフィーナの種族――デーモン族は元々戦闘に特化した魔法を操り、この国を支えてきた種族の一つであるが、その中でも彼女の力は類を見ないほどであった。
彼女が皇帝になってから、間もなく百年が経とうとしているが、これほど長く王座に居続けた者はナイトメアが誕生してからの記録に無い。つまり、それほどまでに彼女が強いのである。
しかしながら、強いだけでは百年もの間、皇帝であり続ける事は不可能である。
それが出来たのは、彼女が国を導いて行く指導者としての才も持ち合わせていたからに他ならない。他者を容赦なく蹴落とし切り捨てる――しかし、救いの手も差し伸べる。
常に国の利益を優先した彼女の判断と、彼女の持つ最強と謳われた力によって、幻想帝國は世界の頂点に立つほど栄える国となったのである。
