Eltofeena   -lost queen-


宙に浮いた島の上に築かれた黒い城――。この国に暮らす人々ならば、この説明だけでそれが何を示すのか伝わるだろう。そこは幻想帝國の首都にある黒き城エネロハイル――女王の城である。

……コンコンと部屋の扉をノックする音がした。

「――入れ」

その言葉を聞いて、外から扉が丁寧に開けられる。

「――失礼いたします」

縦長に広く造られたその部屋に、黒い鎧を纏った男の兵士が入ってきた。ここはエネロハイルで数ある部屋の中でも幹部達が使用する会議室であり、通常ならば一般の兵士が入る事はない部屋である。しかも今回は部屋の一番奥の席に女王であるエルトフィーナがいるのである。

部屋に入った兵士は背筋を伸ばして一礼する。そのぎこちない様子で緊張しているのが一目で分かる。

「用件はなんだ?」

緊張してどう切り出すか躊躇っている兵士に言葉を掛けたのは、会議に参加していた大柄の男の兵士であった。

女王には親衛隊ロイヤルナイツという側近達がいる。女王を補佐する彼らは、女王に次いで、この国で優秀とされる実力者であり、今この場には女王の左右に三人ずつ、合計6人のロイヤルナイツの全員が座っている。

部屋に入ってきた兵士も階級が低いわけではないのだが、さすがにロイヤルナイツに加え、女王が揃った空間では緊張が隠せなかった。

そんなロイヤルナイツのうちの一人である大柄な男の兵士の問いに、報告にやって来た兵士は、一つ呼吸を置いてから答えた。

「――はい! 先日より調査していました国民の一部に不穏な動きをしている者達がいるという件で、詳細な情報を入手しましたので、ご報告に上がりました。」

100年近い反映を続ける幻想帝国であるが、幾度となく国の内部で暗躍する者達は現れた。女王は、そのたびにそういった国が意図しない者達を数え切れないほど処理して来たのだ――しかし、いくら処理しようとそういった者達が完全に消える事はなかった。

「そうか、ではその話は私が聞く、別室へ行こう」

そう言って、ロイヤルナイツの大柄の男が席を立とうとする。

「よい――ここで話せ、私が直接聞く」

部屋を移動しようとする二人の兵士を女王が言葉で止める。

「――承知しました」

そう言うとロイヤルナイツの男は情報を持ってきた兵士に許可を出す。

「いいぞ、話せ」

兵士は一言「はい」と答えると調査した情報の報告を始めた。

首謀者はゼルグスム=バゼル。戦争を主体とする現在の幻想帝国の方針に異を唱える活動家の一人である。

最近になって、組織としての体系を取り始め、まだ規模は小さく、行動も密かに行われているが、着々とその勢力を拡大させており、いずれは脅威になるかもしれないとの事だった。